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今日は朝からやけに落ち着かない。
珍しく目覚ましよりも早く起きてお母さん達を驚かせた。
だって・・・今日は三蔵が帰ってくる日、本当は緊張して寝れなかったんだよね。
改築された三蔵の家は悟空君用の部屋がひとつ追加されて、でもあたしの部屋の窓の前には以前と同じようにひとつの窓がある。
おじさんに聞いたら「そこは以前と同じ、三蔵の部屋ですよ。ちゃん。」って全部知ってるかのような笑顔でにっこり言われた。
さすが、光明おじさんだなって思った。
「早く帰って来ないかなぁ・・・。言いたい事あるのにな。」
部屋の窓にまるで洗濯物のようにダラリと体を伸ばしたまま時計を見ると、11時を指している。
悟空君が教えてくれた三蔵帰宅予定は確か・・・12時。
「あーもう!時計の針進めちゃおうか!!」
折角人が気合を入れて待ってるって言うのに・・・三蔵もどうしてもっと早く帰って来ないのよ!!
お昼時なんて家もご飯食べちゃうからすぐ会えないじゃない!
「時計の針を進めても時間は変わらねぇだろう。」
「気持ちの問題よ!あたしがご飯食べてる時に帰ってきたら嫌じゃない!!」
「ほぉ・・・じゃぁちょうど良かったな。」
・・・待って、あたし今、誰と話してるの?
ゆっくり顔をあげてついさっき迄カーテンが引かれ、閉まっていたはずの窓を見ると・・・不敵な笑みを浮かべた三蔵がいた。
「え?あ?何で!?」
「今日帰ると言っただろう。」
「で、でも12時って!?」
「10時の間違いだ。悟空のヤツが聞き間違えたんだろう。」
「え?あ、そっか。」
「で、言いたい事があるそうだな。」
「え゛」
「さっきそう言ったじゃねぇか。」
っと待て!一体何時からあたしの独り言聞いてたんだ?!
昔のように動揺すると落ち着きが無くなるあたしを見越して、三蔵がひょいっと屋根を飛び越えてあたしの前にやって来た。
「お前の為に帰ってきた。お前の気持ちを聞く為に・・・」
真っ直ぐあたしの目を見る三蔵を見ていると、あたしの心臓は壊れそうなほど早くなる。
この気持ちが何か、あたしはこの一年でしっかり分かっている。
昨日からずっと握り締めていた手を三蔵の前に差し出すと、一瞬三蔵が眉を寄せたがすぐに同じようにあたしの方へ三蔵も手を差し出した。
ゆっくり手を開いて三蔵の手にあの日渡されたライターと一緒に、一年間・・・ううん、ちっちゃい頃からずっと思っていた事を三蔵に伝える。
「・・・三蔵が、好き。幼馴染じゃなくて、恋人に・・・なりたい。」
耳まで真っ赤になって必死で伝えた一言。
物凄く恥ずかしくて俯いてたら、ライターを握っていた手に何だか温かい物が触れた気がして反射的に顔をあげた。
するとそこには・・・まるで王子様がお姫様に挨拶をするかのように手の甲へ唇を寄せている三蔵がいた。
「さっ、さっさんぞっ!?」
「もう二度と離れねぇからな・・・覚悟しとけ。」
「・・・三蔵!!」
「っっ!」
嬉しくて嬉しくて思わず三蔵に抱きついたら、前みたいにハリセンで頭を叩かれた。
「場所を考えろ!!」
あ、そう言えば三蔵がいたの窓の外だったっけ?
「あはははは・・・」
慌てて手を引いて部屋の中に三蔵を招き入れて、今度は安全な場所で三蔵に飛びついた。
そのまま三蔵がベッドに腰掛けたからあたしもそれに合わせて少ししゃがむと、三蔵があたしの耳元にポツリと呟いた。
「・・・好きだ、。」
それに驚いて動きを止めていると、すぐ側に三蔵の顔があって・・・自然と目を閉じた。
ずっと側に居たのに初めて触れた唇は・・・大好きなチョコよりも蜂蜜よりも甘くて蕩けてしまいそうだった。
こうして近くて遠い幼馴染は、
何より近い恋人になった。
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15960hitをゲットされました まい サンへ 贈呈
『幼馴染設定でお互いに「好き」と伝えるまでの過程』と言うリクエストでした。
さすが常連様です!そんな過程書けるのか!?と思いながらエンジンがかかれば出来るものですねぇ(笑)
コレで風見もちょっとは成長できたでしょうか(笑)初のパラレルと言う事もあり、感想熱望です!
過程を書くと言う事で場面場面で一応時間の経過を示したつもりです。
(どれが何時頃?と言う鋭い突っ込みは横に置いといて下さいねv)
本当は裏にこんな人達もいたんですよ♪副会長の八戒とか、大学の寮で知り合う悟浄とか・・・でもってヒロインのお友達は今回容赦なく私(ヒカル)にしてしまいました(大爆笑)
開設当初から遊びにいらして頂いているくせにリクエスト一年待ちの物があるまいさんには後日、別のプレゼントをお贈り(別名:押し付け)したいと思います。
まいさん、リクエストありがとうございましたv
少しでも楽しんで頂けると嬉しいです!
また遊びに来て下さいねvvv